テレビニュースやファッション雑誌などでも取り上げられるようになった「SDGs(持続可能な開発目標)」ですが、何となく理解はしていても、具体的に何を達成するのか分からない人も多いかと思います。
今回は、その中でもSDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」の内容を詳しくご説明します。
SDGsとは?
SDGs(エス・ディー・ジーズ)とは「Sustainable Development Goals」の略称で、日本語では「持続可能な開発目標」と言います。
開発目標と言っている通り、SDGsには社会課題を大きくまとめた17のグローバル目標と、その17の目標をさらに具体的にした169のターゲットで構成されています。
また、この目標は、2016年から2030年までの15年間で、世界中にある問題を解決するために掲げられた国際社会共通の目標でもあります。
こちらがSDGsで掲げられている17のグローバル目標です。
1.貧困をなくそう
2.飢餓をゼロに
3.すべての人に健康と福祉を
4.質の高い教育をみんなに
5.ジェンダー平等を実現しよう
6.安全な水とトイレをみんなに
7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに
8.働きがいも経済成長も
9.産業と技術革新の基盤をつくろう
10.人や国の不平等をなくそう
11.住み続けられるまちづくりを
12.つくる責任つかう責任
13.気候変動に具体的な対策を
14.海の豊かさを守ろう
15.陸の豊かさを守ろう
16.平和と公正をすべての人に
17.パートナーシップで目標を達成しよう
今回は、SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」の内容をご紹介しますので、それ以外の目標にも興味がある方はこちらからSDGs17の目標と169のターゲットをご覧ください。
SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」のターゲットとは?
次にSDGs目標4「質の高い教育をみんなに」の具体的な課題が記されているターゲットをご紹介します。
SDGs目標4 質の高い教育をみんなに
すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する
4.1 2030年までに、全ての子供が男女の区別なく、適切かつ効果的な学習成果をもたらす、無償かつ公正で質の高い初等教育及び中等教育を修了できるようにする。
4.2 2030年までに、全ての子供が男女の区別なく、質の高い乳幼児の発達・ケア及び就学前教育にアクセスすることにより、初等教育を受ける準備が整うようにする。
4.3 2030年までに、全ての人々が男女の区別なく、手の届く質の高い技術教育・職業教育及び大学を含む高等教育への平等なアクセスを得られるようにする。
4.4 2030年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。
4.5 2030年までに、教育におけるジェンダー格差を無くし、障害者、先住民及び脆弱な立場にある子供など、脆弱層があらゆるレベルの教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにする。
4.6 2030年までに、全ての若者及び大多数(男女ともに)の成人が、読み書き能力及び基本的計算能力を身に付けられるようにする。
4.7 2030年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、グローバル・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする。
4.a 子供、障害及びジェンダーに配慮した教育施設を構築・改良し、全ての人々に安全で非暴力的、包摂的、効果的な学習環境を提供できるようにする。
4.b 2020年までに、開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、並びにアフリカ諸国を対象とした、職業訓練、情報通信技術(ICT)、技術・工学・科学プログラムなど、先進国及びその他の開発途上国における高等教育の奨学金の件数を全世界で大幅に増加させる。
4.c 2030年までに、開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国における教員研修のための国際協力などを通じて、質の高い教員の数を大幅に増加させる。
日本では、小学校、中学校の9年間が義務教育で、全ての子どもが教育を受ける権利を持っています。
また、高等学校では国公私立に関係なくの保護者の所得によって、就学支援金の給付をしていたり、私立の高等学校では2020年4月から、年収が約590万円未満の保護者の生徒は授業料の実質無償化が始まりました。
このように日本では、保護者の収入格差に影響することなく子どもたちが学校へ通える制度が整っていますが、SDGs目標4のターゲットではジェンダーや貧富の差から学校に通えない子ども達を少なくしましょうという目標が多いです。
それはなぜかというと、途上国では多くの子どもたちが学校に通いたくても通えていないという状況がまだ続いているからです。
それではSDGs目標4は日本には関係のない目標なのか?と思う方もいらっしゃるかもしれませんがそうではありません。
次の項目ではSDGs目標4「質の高い教育をみんなに」の途上国の課題と日本の課題をご紹介します。
途上国の教育の課題
先ほども述べたように、途上国には学校に通えない子ども達がたくさんいます。
具体的には、2018年にユニセフ(国連児童基金)が発表した報告書を元にすると、世界で学校に通えていない5歳から17歳の人数は3億300万人で、そのうちの1億400万人は紛争や自然災害の影響を受けている国の子ども達です。
ではなぜそのような状況が起きるのでしょうか。
学校に通うお金がない
生きるためには働かなくてはいけない
学校が遠くて通えない
性別によって学校に通うことが許されない
など他にも様々な理由があります。
ですが実際には、ユニセフの活動や様々な国からの支援により、年々学校に通えない子どもの数は徐々に減っています。
しかし、SDGsでは「質の高い教育をみんなに」を目標にしているので、学校に通える子どもが増えればいいわけではありません。
世界では読み書きや基礎的な計算ができない子どもが約2.5億人おり、そのうちの約1.3億人は4年以上学校に通ったにも関わらず読み書きや計算ができていないという結果がでています。
それがなぜかというと
教室、教材、先生が足りてない
先生が教えられない
などの理由があげられます。
学校に通えればいいだけではなく、学校で学ぶ環境を整えることも大事なのです。
その課題をなくすためにも継続的に多くの国や企業が途上国への支援を行なっています。
日本の教育の課題
途上国に対し、日本では全ての子どもに学ぶ権利があり、全ての子ども達が学校へ通えるような制度や支援があります。
それでは、日本の教育の課題は何でしょうか。
文部科学省が発表している日本の課題はこちらです。
○ グローバル化や情報化、少子高齢化など社会の急激な変化に伴い、高度化・ 複雑化する諸課題への対応が必要となっており、学校教育において、求められる人材育成像の変化への対応が必要である。
○ これに伴い、21世紀を生き抜くための力を育成するため、これからの学校 は、基礎的・基本的な知識・技能の習得に加え、思考力・判断力・表現力等の育成や学習意欲の向上、多様な人間関係を結んでいく力や習慣の形成等を重視する必要がある。これらは、様々な言語活動や協働的な学習活動等を通じて効果的に育まれることに留意する必要がある。
○ 今後は、このような新たな学びを支える教員の養成と、学び続ける教員像の確立が求められている。
○ 一方、いじめ・不登校等への対応、特別支援教育の充実、ICTの活用など、諸課題への対応も必要となっている。
○ これらを踏まえ、教育委員会と大学との連携・協働により、教職生活全体を通じて学び続ける教員を継続的に支援するための一体的な改革を行う必要がある。
文部科学省 1.現状と課題より
このように日本にも教育の課題が沢山あります。
これらを解決するためにも、2020年から学習指導要領が変わり、小学校での英語教育やプログラミング教育が必須になったりと、文部科学省をはじめ様々な企業が子どもたちが新しい時代へ対応するための「生きる力」を育む教育が進められています。
SDGs 目標4「質の高い教育をみんなに」を達成するための取り組み
途上国、日本の教育における課題を達成するためにどのような取り組みをしているのかご紹介します。
独立行政法人国際協力機構(JICA)
JICAが2004年から行なっている西アフリカへの支援が「みんなの学校プロジェクト」です。
みんなの学校プロジェクトの内容はこちらです。
「みんなの学校プロジェクト」は、JICAが2004年から西アフリカを中心に支援してきた教育開発プロジェクトです。2004年にニジェールの23校から始まり、2007年にはニジェール国内すべての学校で普及。ニジェールにおいて入学率などが大きく向上するなど(注1)大きな成果を上げ、セネガルやマダガスカル等、他のアフリカの国々にも展開しています。
独立行政法人国際協力機構 JICAアフリカ4万校に広がる「みんなの学校」より
パナソニック株式会社
パナソニックでは2013年にSDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」の支援としてカンボジアへソーラーランタンを寄贈しています。
その結果、ソーラーランタンを寄贈したカンボジアの農村部ではランタンを使用し夜の識字教室などが開かれたことにより、現地での識字率の向上になりました。
SDGs目標7を解決することで結果的に目標4の「質の高い教育をみんなに」への支援にも繋がっています。
こちらはパナソニック社員が現地カンボジアへ行った際の感想です
識字教室では、生徒である成人女性に混ざって、その子どもたちも一緒に勉強をしていました。
「孫に読み書きを教えて、知識ある人間になって、素晴らしい将来を生きてほしいです。知識があれば、将来、田畑がなくても困らないですから」
「子どもが勉強でわからないことがあっても、今は教えることができるのでうれしい」
親が読み書きできると、本人の自立と尊厳につながるとともに、子どもや孫たちへの影響も大きいと考えられます。
ソーラーランタンは、各家庭の生活のさまざまな場面で利用されていて、子どもの夜間の自習のためにも使われているそうです。
今回、チューンプレイ村の識字教室の現場をこの目で見て、村人の生活の質の向上のためにソーラーランタンが確かに役立っていることを実感しました。
パナソニック株式会社 カンボジア:農村部での識字率アップに貢献より
SMBC日興証券
日本は先進国の中でお金の教育が遅れていることをご存知でしょうか。
SMBC日興証券は、質の高い教育をという面で日本であまり行われていない金融教育を次世代を創る子ども達へ行なっています。
ビジョン:若い世代の豊かな未来に向けたチャレンジをサポートする存在
持続可能な社会の発展には、次世代の担い手となる子どもたちの育成、新産業の創造、新興国などの健全な経済成長が不可欠です。当社では、各世代のニーズに応じた金融経済教育の提供を通して、正しい資産形成、ひいては健全な資本市場の実現に貢献していくとともに、次世代のサポートを行っているNPOの支援・協働などを通じ、若い世代の未来へのチャレンジをサポートしていきます。
SMBC日興証券 当社におけるサステナビリティ より
まとめ
SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」を達成するためには、途上国ではまだ学校に通いたくても通えていない子ども達全員が、学校へ通えるようにする支援が必要です。
さらに、ただ学校へ通えるようにするのではなく、読み書きや基礎的な計算ができるようになるまで支援することが大切です。
現在、教育における課題を解決するために、様々な国、企業が途上国を支援しています。
また、日本にも日本ならではの教育の課題があり、次世代を生きる子ども達が新しい時代に対応するための教育を文部科学省をはじめとし、様々な企業が行なっています。
最後に
弊社では国際社会の共通目標「SDGs」を子ども達へ理解してもらい、課題をどう解決するかを考えるワークショップを行なっています。
FROGS版SDGsワークショップ
弊社のSDGsワークショップでは、小学校高学年以上の学生向けのグループワーク形式のワークショップを行なっております。
まず、SDGsについてや、17の目標を子供達にも分かりやすく説明した上で「2030年、幸せな社会とは何か?」という問いを子ども達に考えてもらいます。
その後、自分たちが求める幸せな世界はSDGs17の目標のどれに当てはまるか、またそれを実現させるには今現在どのような課題があるのか、それをどう解決するかまでを考えてもらい、最後には発表をしてもらいます。
このように今起こっている課題に対して、自分だったらどのように解決するかを考えてもらうことで、課題を「自分ごと」にし、行動を促すワークショップとなっています。
2019年1月に行なったSDGs研修では、子ども達メインのワークショップに保護者も混ざって一緒にワークショップを行いました。
そこでは、子ども達、保護者が考える2030年の幸せな世界について議論していました。このようにFROGSでは、子どもと大人が混ざってワークショップを行う研修もご用意しております。
また、その様子を沖縄地元紙の琉球新報さんがまとめてくださったのでぜひ、こちらからご覧ください。
弊社のSDGsワークショップについて気になった方は、各種研修紹介ページからお気軽にお問い合わせください。
参考
ユニセフ 報告書
文部科学省 1.現状と課題
独立行政法人国際協力機構 JICA アフリカ4万校に広がる「みんなの学校」
SMBC日興証券 当社におけるサステナビリティ
パナソニック株式会社 カンボジア:農村部での識字率アップに貢献
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