そもそもPBLとは?
そもそもPBLとはどういう意味なのでしょうか。
PBL(Project Based Learning)は、自ら問題や、課題を発見し解決する能力を養うことを目的とした教育方法であり、学生が主体的に学ぶアクティブ・ラーニングの一種とされています。
日本語では「問題解決型学習」などとも呼ばれています。
現在、多くの大学でも注目され、すでに導入している大学も少なくありません。
国内ではPBLのチュートリアル型が多く実施されています。
今回は、そんなPBLチュートリアルについて掘り下げていきたいと思います!
PBLチュートリアルとは?
PBLチュートリアルとは、少人数の学生がチューターの助言を得ながら個々の問題解決に必要な事柄を学ぶ方式で、PBLに基づく学習を「PBLチュートリアル」と呼ぶこともあります。「チューター」とは、それに携わる教師のことを示しています。
体験型のPBL学習とは何が違うのか?
PBLチュートリアル型では、仮想のストーリーをもとにPBLを実施します。
たとえば、教室内でグループを作り、特定のシチュエーションを設定し、生徒同士でグループワークを行ったり、検討をおこなう学習方法です。
外部企業などへ協力を要請したり、実地研修を行ったりが不要なため、容易にPBL型の教育を実施できるのが特徴です。
また、医学部などの実践が厳しいようなケースでも、チュートリアル型は実施することが可能です。そのような点から、学校の授業で行われるPBLはチュートリアル型が主流となっています。
どんな効果が期待できる?
PBLチュートリアル教育では、従来の教育に比べて学生が主体的に学ぶことができるため、以前より学習効果が期待できます。
【自己学習能力が高まる】
PBLチュートリアル型の教育では、先生が教えるのではなく、生徒は自ら考えて主体的に学ばなければなりません。
教科書、参考書を使って調べたり、時にはインターネットなど、先生が全ての知識を教えない分、工夫して学ぶ必要があります。そのため、自己学習能力、自己解決能力など主体的に学ぶ力が向上します。
これは、PBL学習が用いられがちな、社会系、総合学習系の教科に限らず、全ての学習において、必要な力であり、学習力の基礎でもあります。
PBLチュートリアル教育により、主体的な学びを向上させ、全ての教科の学習効率が上がることが期待できます。
【多様性を受け入れる力が身につく】
PBLチュートリアル教育では、複数人でグループを作って学習を行います。
自分の意見を発表することで、発表力、文章構成能力なども身につきますが、なにより、相手の話を聞き、自分の意見との違いを感じることができるという点が大きな学びに繋がるでしょう。
グループを構成しているメンバーは1人1人違う知識、経験、価値観を持っています。そのような、多様性がある中で、相手の意見を尊重しながらも、双方が合意できる意見にまとめていく過程というのは、今後グローバル化が進む社会において確実に必要な力です。
多様性を受け入れることの重要性が提唱されているなか、グループ学習でプチ多様性を体験することは生徒にとって非常に大きな経験であると思います。
【自分自身を分析し、フィードバックをする力がつく】
上記でも述べたように、PBL型の学習ではグループ活動で多くの人の意見を聞く機会が増えます。従来の学習では、テストで良い点数を取ればそれでよいと考える生徒が少なからずいると思います。
どんなに学習意欲のある生徒でも、自分の点数を分析したり、点数が高い生徒の勉強法を分析したりするところまで自力でやるのは難しいでしょう。
PBL型の学習では点数ではなく、その結論に至った過程や、グループでの発表の質などが求められます。
そのような活動に答えはないため、生徒たち自ら、自分たちの意見をフィードバックし合い、より良いものにしてく必要があります。
そのため、答えのない問題を解決する力、自らを客観的に見つめる力、生徒たち自身でフィードバックし合い解決する力が付くでしょう。
実施例
どのようにPBLチュートリアル教育が実施されているのか、例を挙げたいと思います。
【浜松医科大学】
浜松医科大学では、PBLチュートリアルを週2回を基本とし、1週で一つの課題が終わるように組み立てています。(ユニットによっては、週に2回ない場合もあるため、課題を週をまたいでやることもある)
1回目のPBLチュートリアルの時間では、課題(医学部であるため症例)が提示されます。学生たちが将来現場で遭遇するであろう事例を多く用いることで、医療現場の背景を理解し、問題解決能力を身に付けることが目的です。
その課題に基づき、参考図書、インターネットなどを活用し、自己学習を行います。その際、学習指導教員(チューター)に相談することも可能です。
なお、自己学習の時間も正規の時間割の中に確保されています。
学習の終わりには、総合討論と呼ばれる学習成果を発表する場も設けられています。
【徳島大学】
徳島大学医学部では、チューターが加わるチュートリアル授業は週に3回(各90分)で組み立てています。
1回目のチュートリアルでは、課題(症例)の提示,課題における問題点(疑問点)の抽出、仮説の立案、学習方法の立案が行われます。
2回目のチュートリアルでは、自学自習で調べてきた内容の発表と討論により、問題点の解決・整理(仮説の検証・修正)を行います。さらに,課題(症例)に関して追加の資料がチューターから提示され、1回目と同様の流れで、解決できていない問題点について次のチュートリアルまでに自己学習します。
3回目のチュートリアルでは、2回目と同様に、発表と討論、問題点の解決・整理の後で、課題(症例)に関して追加の資料提示があり、さらに発表と討論、問題点の抽出、仮説の立案、学習方法の立案を行った後に、最後にまとめと自己評価などが行われます。
【まとめ】
ここまでPBLチュートリアル教育について紹介してきました。課題を提示し、あるシナリオを想定しながら学習することで、従来型の教育より、生徒の学習効果が高まることが期待できます。また、体験型とは違い、外部企業への依頼や、フィールドワークを必要としないため、容易に実施することが可能です。
初めてPBL型の学習を取り入れる際はまずチュートリアル型の教育を導入してみてはどうでしょうか。
FROGS流PBLワークショップ
これまで、PBLチュートリアルについて紹介してきましたが、実際どう学校に取り入れていいか分からないという教育関係者の方々へ弊社が行なっている、小学生から大学生まで対応しているPBLワークショップをご紹介します。
地域課題解決 Workshop
身の回りで感じている地域の課題をテクノロジーを使ってどう解決するかを考えます。世界で起こっているイノベーションの事例を踏まえながら、自分たちだったらどう解決するかグループで話し合い、考えます。
人数:4名以上(3〜4名を1組としたグループワーク形式)
時間:3時間程度
対象:中学生以上の学生
身に付くスキル:問題解決能力、アントレプレナーシップ 、思考力
SDGs Workshop
2030年に向けたグローバルアジェンダ「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の17のゴールをキーにして、PBLの手法で、持続可能な共生社会を自らの手で作るための行動をデザインしていくワークショップです。
人数:4名以上(3〜4名を1組としたグループワーク形式)
時間:3時間程度
対象:小学校高学年以上の学生
身に付くスキル:思考力 、創造力
MESH Workshop
日本が提唱する未来社会のコンセプト「Society 5.0」で描かれる世界では、地域環境や世代を超えたIoTインフラが私達の生活を支えています。IoTと私達の関わりや変化する社会のカタチをSONYのIOT学習ツール「MESH」を使って、Hands-On Minds-Onで学んでいきます。
人数:4名以上(3〜4名を1組としたグループワーク形式)
時間:3時間程度
対象:小学校3年生以上の学生
身に付くスキル:創造力、問題解決能力、思考力
FROGS流PBLワークショップの特徴
弊社ワークショップでは、社会課題に密着したPBLワークショップが特徴です。地域課題やSDGsなど、生徒達自身が解決したいと思える社会課題を見つけてもらい、それを自分たちならどう解決するかを考えてもらいます。
そうすることで、身の回りの社会課題に気づけるようになり、それらを解決するための問題解決能力、思考力、創造力が高まる効果があります。
また、社会課題の解決案を生み出すということを体験することによって、生徒達への達成感や自信、学びへのモチベーションへ繋がります。
さらに、「MESH」を使ったワークショップもご用意していますので、テクノロジーが私たちの生活に実際どう関わっているのか、それをどう活用していくかも学ぶことができます。
弊社PBLワークショップが気になった方はこちらから内容をご確認ください。
■参考
・徳島大学医学部 PBLチュートリアル
・浜松医科大学「PBLチュートリアル教育」
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