アクティブラーニングとは?
アクティブラーニングとは、
教員による一方通行型の授業ではなく、生徒や学生が主体となって関わり学べる学習方法です。
アクティブラーニングの目的は、正しい知識を修得することではなく、正解のない議論(課題)を通して問題解決へのアプローチ方法を身につけることです。
グループワークやディスカッション、ディベートなどが具体的な実践例としてあげられ、学習者の認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験といった能力の向上や育成を目指しています。
アクティブラーニングの効果について詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください・
アクティブラーニングが求められる背景
アクティブラーニングが求められている理由には大きく分けて2つの背景があります。
①社会的背景
インターネットの発達とともに急速に進んだグローバル化や、少子高齢化、様々な社会問題といった環境・構造の変化などが挙げられます。
特に、これまで日本が築き上げてきた、製造業を軸としたモノづくり大国・先進国というイメージは今や過去の姿となってしまっています。
また、先進国では莫大な資金投入によるテクノロジー競争が激化し、日本も例外なくその競争にさらされています。
重厚長大なモノづくり・大量生産の時代では、与えられた条件に従って、指示通りに、いかに早く正確に取り組めるかが重要視されていました。
しかし、AIやロボットなど、テクノロジーの発展とともに、これまでの知識に偏った詰め込み型教育だけでは革新的な発明を生み出せない、という危機感が生じはじめました。
②教育改革の背景
上記のような社会の変化に合わせて、教育も変革を迫られました。
2012年:大学教育の改革(中央教育審議会の質的転換答申)
アクティブラーニングという言葉は、当初大学教育の中で使われ始めました。
平成24年8月28日の第82回総会「文部科学省中央教育審議会」の答申において使われたのがきっかけとされています。
この答申は、「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)」というタイトルで、文部科学省中央教育審議会が取りまとめました。
質的転換とは、学生の「受動的な受講」から「能動的な学修」への転換を指しています。
2014年:小中高等学校教育の改革(学習指導要領の見直し)
2014年11月20日、当時の文部科学大臣から中教審に提出された「小中高の学習指導要領を見直してください」という諮問の中に、アクティブラーニングというキーワードが使用されました。
-生産年齢人口の減少
-急激なグローバル化や、イノベーション
-社会構造や雇用環境の多様化
といった時代や環境の変化を踏まえて、子どもたちが能動的に参加できる教育への転換が掲げられました。
2014年:高等学校教育と大学入試の改革
2014年12月22日の「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」という中教審の答申の中でも、
-基礎的な知識及び技能
-課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力などの能力
-主体的に学習に取り組む態度
が重要とされ、教育改革の一環としてのアクティブラーニングに言及がありました。
①高等学校教育の中でのアクティブラーニングの充実
②大学入試改革としてのアクティブラーニングの実施
の2点が大きく取り上げられ、特にアクティブラーニングが大学入試にも大きく関わるという経緯から、私立の中学校や高校の間でアクティブラーニングという言葉が当たり前のように飛び交うようになりました。
そして、2017年に公示された学習指導は、アクティブラーニングという言葉ではなく、「主体的・対話的で深い学び」という表現で、小中学校でもその取り組みに向けた授業改善が行われていくことが書かれています。
アクティブラーニングの実践例
実際にどのようにアクティブラーニングをVan Amburgh氏というアメリカの学者が作ったアクティブ・ラーニングのカタログの中から、①すぐにできる②少し準備が必要③準備が必要の3つのレベルにわけてご紹介します。
①すぐできる
Q&A
口頭でのQ&A、自発的発言・指名は問わない。
1分レポート
一つの重要単語、名称、概念に注意を向けさせ、簡単にまとめさせる
誤解/思い込みチェック
生徒/学生が持っている情報についてどう認識しているのかを確認する
②少し準備が必要
ロールプレイ/シミュレーション
生徒/学生、または教員によるロールプレイ。指針、ルール、決められた関係性に従ったシミュレーション/ゲーム
小グループ発表/ディスカッション
授業内容に関連した発表/ディスカッション、教育主導あるいは学生主導で行う
特徴づけマトリックス/記憶マトリックス
特徴が「ある/なし」にしたがって、提示された概念を分類させる
③準備が必要
ケーススタディ
シナリオに基づいて、様々なスキルを統合しながら、授業内容に関連した問題を解決させる
ジグソー学習
各メンバーが授業内容から選んだ複数分野のうち一つの専門家になり、メンバー同士が自分の担当分野について教え合うチーム学習
協働学習/問題解決学習
生徒/学生が協働して授業内容を学び、スキルを開発する
また、具体的な実践例を
「アクティブ・ラーニング授業実践事例(200事例)」の中から高校の総合的な学習の時間における実践例を2つ紹介します。
①不二聖心女子学院中学校・高等学校教科等:1年総合的な学習の時間(平成29年7月)単元名:木工作品アイディアコンテスト~「森づくりと森に関する学習」より~
目標
学校林の植栽計画を立てて実際に植栽したり、「森の健康診断」をしたりして、間伐の必要性を実感的に学んできた生徒が、間伐材の需要を高める一助とするための木工作品のアイディアを考えて、NPO法人「土に還る木 森づくりの会」にプレゼンテーションすることを通して、以下の資質・能力を身に付ける。
1(魂を育てる)生命の大切さを理解するとともに、自然界の美しさに気付き味わう感受性を育む。
2(知性を磨く)習得した知識や技能を他の事柄に応用することができる。
3(実行力を養う)自ら考え行動する力を育む。
展開
前単元までの様子
生徒は、地球温暖化防止のために適正な間伐の必要性を学んできた。
本単元「木工作品アイディアコンテスト」の展開
間伐材の需要を高める一助とするための木工作品をデザインし、NPO法人「土に還る木・森づくりの会(以下、森づくりの会と略。木工作品を製作してくださる方々)に提案する。
第1回:アイディアスケッチ(木工作品の構想、アイディアスケッチの完成等)
間伐材の需要を高める一助となるような実用性のあるデザインをグループで考える。
第2回:プレゼンテーションの準備(原稿の作成、役割の分担、スピーチの練習等)
制限時間内にアピールできるように、プレゼンテーションの準備や練習をする。
第3回:アイディアコンテスト(プレゼンテーション・質疑応答・発表等)【本時】
「森づくりの会」の皆さんにプレゼンテーションし、最優秀作品を決定してもらう。
参照:https://www.nits.go.jp/jisedai/achievement/jirei/jirei137.html
②徳島県立脇町高等学校教科等:1年総合的な学習の時間(平成29年9月)単元名:遺伝子組み換え作物の是非
目標
遺伝子組み換え作物について理解を深めるとともに、科学に関連はあるが科学だけでは問題解決にいたらない様々な問題について、立場や意見が異なる人の意見も踏まえながら考える態度を身につける。
展開
1遺伝子組み換え作物(ストレス耐性について、遺伝子組み換え作物のメリット、デメリット等)について インターネット等で調べまとめる。遺伝子組み換え作物についてのアンケートを実施する。
2「生物基礎」の授業において、遺伝子組み換えとはどのような技術か、何ができるのかを考える。
3遺伝子組み換え作物の是非に関するディスカッションにより、他者の意見を踏まえながら考える態度を身 につける【本時】
参照:https://www.nits.go.jp/jisedai/achievement/jirei/jirei149.html
アクティブラーニングを成功させるための準備
これまで、実践例をご紹介してきましたが、最後にアクティブラーニングを実践するにあたって、必要な準備をソフト面、ハード面、マインド/スキル面にわけてご紹介します。
①ソフト面
ソフト面で必要な準備の一つに「質問」が挙げられます。
すべて質問しなくても、生徒/学生の思考を深めることができる問いかけの選択肢がたくさんあることで、場面に合わせて投げる質問を変えるという臨機応変な対応ができるようになります。
質問の種類には、
課題質問(予習用の事前課題として)Assignment Question
単純質問(発言しやすい雰囲気づくり)Break Question
極論質問(賛成か反対かなど意思決定を求める)Decision Question
深掘質問(意思決定に基づいて本質に迫っていく)Engage Question
反転質問(立場/状況を変えた質問で別の視点を加える)Flip Question
一般質問(課題の本質に迫っていく)Generalize Question
などがあります。
②ハード面
ハード面では
講義時間
資料配布
事前課題
教室配置
成績評価
学生指導
など、実施内容以外に関わる準備が挙げられます。
③マインド/スキル面
最後に、実践する先生自身に求められるマインド/スキルを2つご紹介します。
子どもたちの力を信じること
生徒/学生が主体となって授業を進めていく中で、先生がどこまで子どもたちを信じ、授業をゆだねられるか、という点がまず第一に大切になってきます。
「自分が教えた方が良いのではないか」
「子どもたち主体で本当に授業を進られるのか」
という心配はあるかもしれません。
しかし、大人の勝手な思い込みで子どもたちの限界を決めつけてしまっては、子どもたちの可能性や気づきを潰してしまうことにもなります。
まずは子どもたちを信じることから始めましょう。
ファシリテーション能力
生徒/学生のやる気や交流、意見をいかに引き出すことができるか?には、適切な質問や声掛けが重要です。
ファシリテーション能力は、質問力だけではありませんが、まずは前述した、ソフト面の質問内容を考えてみることから始めてみてください。
その場に合わせて質問を変えることで、生徒/学生の思考を深めるサポートをするのが、先生に求められるスキル/役割です。
イノベーター育成者ライセンス事業
これまで、アクティブラーニングについて紹介してきましたが、実際どう学校に取り入れていいか分からないという教育関係者の方々へ弊社が行なっている、小学生から大学生まで対応しているPBLワークショップをご紹介します。
イノベーター育成者ライセンス事業
PBLとはアクティブラーニングの手法の1つであり、現在多くの大学、高校が注目をし導入も始まっています。
「イノベーター育成者ライセンス事業」は弊社の基幹事業である、“Ryukyufrogs”から生まれたサービスです。12年間開発してきたPBLカリキュラムを一般向けにカスタマイズし、ライセンス化いたしました。
指導要領の改正によって、「探求学習を実施しなければならないが、何をしていいかわからない。実施はしているが効果的な実施方法を学びたい」などのニーズに応え、PBL/アクティブ・ラーニングカリキュラムの構築・導入、教員研修まで全面サポートします。
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