人財育成を地域の全体で取り組む
2022年8月23日 インタビュアー:ぽん
編集者・ライター:安里拓也
現在、日本各地で広がっているfrogsプログラム。
各地域プログラムの運営者の人柄や熱い思いをぜひご紹介したいということでインタビューを行いました。
各地域のfrogs実行委員インタビュー第2回目は、龍馬frogsのオーガナイザーを務める宇都宮竜司さんです。
高知県に移住し、高知県内外で新規事業開発や創業支援を行う宇都宮さん。
そんな宇都宮さんがなぜ龍馬frogsを運営しているのか、その想いについて深く聞いてみました。

アルファドライブ高知の公式HPより引用 https://kochi.alphadrive.co.jp/#menber
高知県の1人1人が生きがいを持って幸せに暮らすこと
ぽん
宇都宮さんの簡単な自己紹介を伺ってもよろしいですか。
宇都宮
アルファドライブ高知という会社の代表として、高知県内外の企業の新規事業開発や人材育成、創業支援などをやらせていただいてます。
ぽん
2021年より龍馬frogsがスタートしたということで、宇都宮さんご自身が考える高知県のこれからの10年先の理想の姿をお伺いできたらなと思います。2031年の高知県こうあったらいいなみたいなイメージってありますか。
宇都宮
はい、ありがとうございます。 4年前から高知県に移住し、現在は高知県と東京を拠点に生活をしているんです。
高知県に来た時は、高知県の地場産業を活性化させて、福岡や神戸などの先進地方都市に追いつくみたいなことができたらいいかなと息巻いていたところがあったんですけれども、 最近思っているのはそういう方向性ではなくて、単に経済発展を求めるのではなくて、地域で幸せに生き甲斐を持って働く人とか、暮らしていける人が増えていくことが1番大事だなという風に思っています。 ぽん 高知県に住んでみて、価値観が変わってきたんですね。 宇都宮 はい。なので、10年間かけて高知県と関わって、働くこと、生きていくっていうことが、今以上にその人のやりがいとか、生きがいにつながっていくような世界を作っていきたいなと思っています。
その中で自分自身の活動としても、アルファドライブ高知という事業開発とか、人材育成などをやってる会社として、2030年までに高知からの10の新規事業と、300の起業家人材を生み出すことを長期の経営ビジョンに掲げています。
実現に向かって、色んな活動をさせてもらっています。 だから、会社としてやりつつも、別の枠組みとして、人を育てるっていう中でも、社会人よりももっと手前の学生さんとか、生徒さんを育成していくってことも重要かなと思っています。なので、龍馬frogsを全力でやらせていただいています。
ぽん 先程、言葉の中に「経済発展だけではなくて、 その地域の中で人がどう幸せに働くか」っていうようなことを考えるようになったという話があったんですけど、何か急に価値観が変わったタイミングがあったんでしょうか。または、そう思うようになったきっかけについて教えてください。
宇都宮
地域の人とお仕事をしながら少しずつ「そういうことか」って分かってきました。 例えば、高知と福岡とか神戸みたいなところを比べた時、前提となる物理的な条件や地理的な条件、いろんな条件が違いすぎるのでその状況が異なるのに、別のものを目指す必要はないなっていう風に思ったんですよね。
成長性の高いビジネスをやるのであれば、ちゃんとマーケットがあって、人材も集まっている東京とか、それこそ海外でやればいいかもしれません。
だからといって、高知県には何もないみたいなことはなくて、地方だからこそやれることとか、得られる生き甲斐とかってあると思うんですよね。そういったものが得られるような地域にしていきたいです。そんなことができる仕事とか、会社を増やしていきたいですね。

選択肢を自分で作っていく
ぽん
高知県に住んで、地域の人と仕事をしていくなかで気づいたことなんですね!
続いての質問は、先ほど高知県には交通の便など課題があるという風におっしゃってたんですけど、実際に地域の中で暮らしている中で「高知県の課題」についてお伺いしたいです。
宇都宮
やっぱり、高知県で一緒に働いてる人にこう話を聞いていく中で、 今の仕事や今後やっていきたいことなどの話をする時に、他に選択肢がなかったからとか、自分にとって、これがベストじゃないかもしれないけれども、最適。選択肢の中で最適だみたいな話があったりするんですよ。
その選択肢が「今もうこれしかないから、だから仕方なく」って、選びたくて選んでるわけではなくて、消去法で選んでるみたいなところが課題に感じます。 ぽん 確かに、選択肢が少ないと、どうしても消去法で選んでしまいますよね。
宇都宮 そうなんですよ。選択肢がある程度限られてしまうことは仕方ないんですけれども、そういった中でもしっかりこう自分の意思を持ってこう物事選んでいくとか、選択肢を自分で作っていくとか、 そういうことができることを増やしていきたいなとか、自分もそういうことができるようになりたいです。

龍馬frogsが地域に与えるインパクトとは
ぽん
自分で意思決定することって大事ですよね!
高知県では、仕事がないとか、選択肢がない。 だから、仕方なくこれを選んでるみたいな。その現象として起こってる部分に対して、龍馬frogsを通して、ポジティブな影響やインパクトであったり、そこのなんか繋がりみたいなところ、どう考えてらっしゃるのかなっていうのをお伺いしたいです。
宇都宮
龍馬frogs1期生は、4名選抜されてるんですけれども、4名はこの半年間のプログラムを通じて、自分の意思で決めて、その結果に対して自分で責任を取るっていう経験を通じて、 選択肢の中で選ぶってことではなくて、その選択肢をさらにこう広げることや自分自身で選択肢を作る等の視野を持ってほしいなっていう風に思ってます。それができるのは、frogsプログラムだと思ってます。 ぽん 選択肢を作る経験をfrogsプログラムを通して体験してほしいという想いがあるんですね。 宇都宮 はい。また、龍馬frogsが10年間ぐらい続いていて、10期生ぐらいになって卒業生が50人か100人ぐらいになってくると、結構大きなうねりになるかなって思ってるんですよ。
100人、50人全員が高知県に残るってことはないかなと思うんですけれども、例えば、高知県内外にそれぞれの活動拠点を持ちながら、何かしらの高知県の企業とか、人との繋がりを持ってくれているとかですね。
自分達自身が選択肢を広げるとか、作るってことを理解してやっている人たちが高知の人や企業と関わっていく中で、少し空気も変わってくるかもしれないと思ってます。

龍馬frogsを始めた理由
ぽん
やっぱりこの人財育成 は未来への投資だって、代表の山崎とかも言ってるんですけど、この瞬間ではなくて、後々、ボディブローのように、影響というか、効果が現れるっていうところも地域の財産に変わってくんだなとお話を聞いて思いました。
改めて、龍馬frogsをやろうと決断したその決断に至った経緯について教えてください。
宇都宮
龍馬frogs全体としての経緯の話と個人としてもこういう思いでやってるって話をさせていただきます。
経緯で言うと、2018年に高知県の社内起業家育成支援プログラムをアルファドライブで運営の委託を受けていて、そこで地域における新規事業開発とか、人材育成の事例をレキサスの比屋根さんに来ていただいて、高知県内の経営者の方々向けのセミナーに登談していただいたんですよ。 その時に「frogsプログラム」取り組みに共感して、これを高知県でやるべきだと思いました。 ぽん 琉球frogsの創設者でもある比屋根さんの人財育成の事例から琉球frogsにつながっていたんですね。 宇都宮 そうなんです。龍馬frogs発起人の渡辺さんが意思を持って、周囲の実行委員のメンバーもこう巻き込んでですね。LEAP DAYを見て、高知県でもやりたいってことになって、龍馬frogsをやろうっていうのが決まったっていうような経緯ですね。
僕自身、愛媛県の田舎町で生まれました。振り返ってみると、選択肢ってほんとに多くはなかったと思うんですよ。自分の親も含めて農家で、ビジネスとか起業とか、なんかそういった情報って全くない入ってこないんですよね。
そういう人たちを巻き込んでfrogsプログラムみたいな経験があれば、「未来が変わるんじゃないかな」と思ったところがあったので、個人的な経験も含めて、高知県でやるべきだなと思って、立ち上がったというところです。
ぽん
琉球frogsの取り組みも聞いて、実際にLEAP DAYで発表の場とかも見た上で、これは高知県でもやりたいなと思ったんですね!
ちなみに、実際にLEAP DAYの中でこれはやりたいというか、ビビッときたみたいな瞬間はありましたか。
宇都宮
そうですね、やっぱり、選抜生の話を聞いてるだけでも、 そこに至る半年間でものすごい努力を重ねてきたりとか、貴重な経験を積み重ねてたってことが伝わってきました。その選抜生達の姿を見たときに、これを高知県の学生さんに提供したいなと思ったっていうのが大きいですね。

龍馬frogsが地域にもたらすインパクト
ぽん
大人側がハッとさせられるみたいなこともありますよね。例えば、協賛企業の方々や実行委員会の皆さんもそうだと思うんですけど、選抜生自身の姿を見て、どういう影響というか、ポジティブなインパクトをなんか期待しているというか、選抜生だけではなくて、地域の中での龍馬frogsを見た時に、何か期待されてることなどはありますか?
宇都宮
そうですね。協賛いただいた企業の従業員の皆さんがLEAP DAY等で選抜生の様子を見てくださったりしたなかで、1番に驚いたりすることは若い方々が、高知県の課題に対して、ここまでは真剣に考えて、ここまで具体的な行動をしてるんだってことにびっくりすると思うんですよ。
選抜生に対する驚きとか、感動に加えて、内省の機会にも繋がると思います。自分自身の仕事においてどうだっただろうかとか、自分の会社が今どうだろうかとか、1人1人の大人が大人こそがなんか気づきを得て、目線が変わるとか、仕事の仕方が変わるってことがすごく期待されるんじゃないかなと考えています。

龍馬frogs生の成長を感じたこと
ぽん
選抜生の変化を見て、見ている側の大人側も内省などに繋がり、次のアクションにつながる。大人側も変化させられますよね。
実際に選抜生と関わるなかで感じていることなどはありますか?
宇都宮
そうですね、frogs全体の考え方として、「教えない教育」を大事にしてると思うんです。プログラムをやってみると若干不安だったりはするんですよ。
例えば、説明会後のワークショップの様子とか、選考会の2日間でも目の色が変わった学生さんがいたなとか、明らかに前日と比べて発言やスタンスが変わったなとか、当事者意識が変わったなとか、そういう変化が見られたんですよね。
詰め込み型で教えるってことではなくて、自分自身で考えて選択して、その選択したことに対して責任を取るっていう経験を通じて、選抜生や説明会に参加してくれた学生さんたちが変わるっていう手応えを感じてます。

龍馬frogsを地域全体で行なっていくためには
ぽん
人が変わる瞬間みたいなところにその場で立ち会えるのもfrogsプログラムの魅力ですよね。frogsプログラムは、実行委員会をはじめ、学生や協賛企業の方々様も含めていろんな人を巻き込みながら行なっています。さらに関わる人々(応援や協賛)を増やしていくためには、どんなアプローチをしていきたいですか?
宇都宮
ちょっと難しいんですけど、まず行くことが大事ですかね。
実際に応援したいっていう人がどういう風に関われるのかっていうと、すごくシンプルで、龍馬frogsとか、All frogsとして、大事にしてる価値観に共感してくださって、frogsfとして推奨されること、やるべきことと、逆にfrogsとして、これは違うよねってことを理解してくださった方であれば、どんな方にでも応援してほしいなって、関わる人が1人でも多くなってくると、このfrogsが地域で持つ価値が増していくと思ってます。 ぽん まず最初は行動することが大事ですよね。 地域でfrogsの価値を高めていくための具体的なイメージ等はありますか?
宇都宮 具体的な関わり方ってことで言うと、例えば、あの飲食店経営されてる方がいらっしゃったら、frogs生にちょっと研修の差し入れで、ご飯をいただいたりとか、研修の会場をお貸しいただいたりとか、 そういった協賛をベースに、自社だったらこんなことまでだったらやってあげてもいいよってことがあったらですね、ほんとにお気軽にお声かけいただきたいなと思います。
こちらから、こんな形でいかがでしょう。ってご提案させていただくこともできますので、応援したいなと思いを持っていただいたんだとしたら、じゃあどういう形にしましょうか。相談しながら、形にしていきたいって感じですかね。
ぽん
いろんな形での応援が地域全体で、人財育成をしていくみたいな形が出来上がっていくんですね!それぞれができる範囲でできることで地域の人を育てていくっていう文化が10年後、20年後に実現できたら地域がより良くなっていくだろうなっていう印象があるんですけど、そこに関わってくれる人たち同士の繋がりというか、 「龍馬frogsがどうステークホルダーたちが新しい関係性を築いていけるか、ステークホルダーと関わりを持ちたい」っていうイメージが現時点であれば、それも聞きたいです。
宇都宮
そうですね。単にfrogsを一方的に応援いただくとかだけでなくて、応援してくださる皆さん同士の繋がりができていくことで、 地域の風土とかが変わってくるという効果を期待しているところです。
そのためには、 協賛企業さんが集まる飲み会(懇親会)などをたくさんやりたいんですよ。高知県は、お酒飲むことが好きな人たちが沢山居て、仕事も飲まないと始まらないみたいなところがあって、そういった懇親会をきっかけに、関係性を作って行きたいですね。
協賛いただいてる企業さん同士の繋がりを作っていくとか、なんかそういったことが、協賛いただく価値の1つになっていくといいなと思ってます。

龍馬frogsの展望
ぽん
これから2年目、3年目と重なっていくにつれて、できることややりたいことというのが、広がっていくのかなと思っています。実際に3期目を迎える茨城県では、プログラム研修の中身にも地域性を出していきたいなみたいな話がありました。
例えば、龍馬frogsでも今後、その研修の中身を地域の特色みたいなところを出していきたいとか考えていらっしゃいますか。
宇都宮
そうですね。研修そのものについては、 特色を出していこうとも思ってません。そこはfrogsの大事なところなので、あまり変える必要がないかなと思ってます。
龍馬frogsならではの良さを出していきたいなという話で言うと、選抜生が高知県ならではの課題に取り組んだ時、例えば、高知県は一次産業がすごい盛んなので、一次産業ってこういろんな人がいろんな課題解決に取り組んでたりするんです。
そこに片足突っ込むことができるようなこう仕掛けを作ってあげたりとか、関連する人たちと一緒に何かやってみるってことが、機会として作れたらいいかなとは思います。
ぽん
実際に学生がスタートアップを志した時に、新規事業やスタートアップの支援を行われている宇都宮さんならではの視点でのフィードバックを得られることは凄くいいですね!
最後に、実行委員長として、この龍馬frogsを運営していくにあたって、宇都宮さん自身のこの意気込みの部分であったりとか、最後のまとめとして一言何かいただきたいです。
宇都宮
そうですね。今後もしかしたらこう応援してくれるかもしれない。高知県内の企業の経営者の皆様とか、働いていらっしゃる皆様向けにお話をさせていただきます。 実際に協賛のご提案させていただく際に、明確にお伝えしてるんですけれども、龍馬frogs を応援していただく、協賛をしていただくとしても、数年内に分かりやすい、見返りがあるような話じゃないかもしれないなと思います。 ただ、中長期の目線で見た時に、龍馬frogsに関わってくださった企業さんの中の人の意識が変わるとか。 もしかしたら、選抜がいつ何かしらのタイミングで、高知県内の企業さんで働くってことになるかもしれません。 長期目線での関係性作りとか、地域作りだと思っています。今の段階で具体的な内容で、確実に見返りがあるというご提案させていただくのは難しいかなと思うんです。
けれども、少し不確実性が高いけれども地域のための投資だと思って、一緒に龍馬frogsを応援していただきたいなと思ってます。
ぽん
宇都宮さん、ありがとうございました。
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